【医師が監修】多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性の関連まとめ

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みなさま、こんにちは。PCOS編集長です。

今回のテーマは【多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性の関連】についてです。現在ではインターネットで多くの情報を得ることができるので、「多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性は関係があるらしい」という知識をご存知の方も多いかもしれません。

しかし、そのメカニズムを実際に詳しく説明しているサイトはありません。

今回、海外の論文なども参考にしながら、多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性についてまとめてみましたので、ゆっくりとご覧ください。

 

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PCOSの症状

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)は生殖期にある女性の6~8%が罹患する比較的多い疾患です。

症状としては、月経異常や不妊、多毛や低音声などの男性化、肥満などの多岐にわたる症状があらわれ、また症状の発現頻度に個人差がある病気です。

2007年に日本産科婦人科学会が、

1.月経異常
2.多嚢胞性卵巣
3.血中男性ホルモン(アンドロゲン)高値またはLH(黄体形成ホルモン)基礎値高値かつFSH(卵胞刺激ホルモン)基礎値正常

という3つをすべて満たす病態をPCOSとするという診断基準を決定しました(*1)。

これらの特徴をもったPCOS患者を調べてみると、【インスリン抵抗性】がある患者がとても多く、近年PCOS治療の標的として注目を集めています。

 

インスリンの働き

インスリン抵抗性とは、インスリンの効きにくい体になっている状態のことです。

正常の人は膵臓からインスリンが分泌されると、インスリンが血液中の糖(グルコース)を筋肉などの細胞へ取り込むように働きかけるので、血液中のグルコース濃度(血糖値)は下がります。細胞に取り込まれたグルコースはエネルギーとして使われます。
血糖値はホルモンによって調節されていますが、血糖値を上げる役割をもつホルモンはグルカゴン、アドレナリン(エピネフリン)、成長ホルモン、副腎ホルモン(コルチゾール)、甲状腺ホルモンと多様に存在します。しかし血糖値を下げるホルモンはインスリンしかありません。脳のエネルギー源が糖しかないので、大事な脳を守るために体が血糖値を下げないよう工夫されているのです。

そのインスリンが正常に分泌されているのに、インスリンに対する細胞の反応が鈍くなり、細胞がグルコースを取り込まないために血中のグルコース濃度が高くなることをインスリン抵抗性と言います。膵臓は高血糖を感知し、さらにインスリンを分泌するので、血液中のインスリン濃度が高い高インスリン血症になります(*2)。

 

インスリン抵抗性とPCOSの病態

PCOS患者はインスリン抵抗性が多く、高インスリン血症になります。通常、多くのアンドロゲン(男性ホルモン)は肝臓で産生されるSHBG(性ホルモン結合グロブリン)と結合し非活性型になっているのですが、インスリンはSHBGの産生を抑制するので、高インスリン血症のPCOS患者では活性型のアンドロゲンが増えます

 

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またインスリンは肝臓でIGF1(インスリン様成長因子)と結合するIGFBP-1(インスリン様成長因子結合蛋白)の産生も抑制します。するとIGFBP1と結合できないIGF1は卵巣を刺激してアンドロゲンの分泌を促進します。またIGF1は下垂体も刺激し、それによってLHの分泌が高まり、さらにアンドロゲンが産生されます(*2)。

 

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このようなメカニズムでPCOS患者ではアンドロゲン(男性ホルモン)が過剰になるため、ニキビが大量に発生したり、声が低くなったり、体毛が濃くなるなど、男性化兆候が見られることになります。

PCOS患者ではLH分泌が増えているため、逆に卵胞発育に重要なFSHの分泌が減ります

結果としてPCOS患者はホルモンバランスの崩れによる月経異常、LH高値、アンドロゲン高値による男性化、発育不全の卵胞が沢山卵巣にたまり、不妊となります(*3*4)。

 

インスリン抵抗性の原因

生活習慣

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加齢、不安、ストレス、睡眠不足、運動不足、肥満、飲酒、喫煙など生活習慣による要因は、遺伝的な要因と合わさってインスリン抵抗性を引き起こします。

特に肥満における札幌医科大学の調査では、インスリン抵抗性の人は肥満群(BMI≧25kg/m2)で25.0%,正常体重群(<25kg/m2)で4.5%という結果になり、肥満はインスリン抵抗性と密接に関係があると報告されています(*5)。

*肥満度の計算は1999年日本肥満学会による肥満の判定基準より
BMI=体重kg/(身長m)2の計算式で数値化され、22kg/m2 を理想体重、25kg/m2以上を肥満とみなします。

脂肪細胞の中の白色脂肪細胞は脂肪酸(体内で利用されやすい形の脂質)や糖を細胞の中に蓄える役割があり、飢餓に備えるための細胞です。小さい白色脂肪細胞はアディポサイトカインと呼ばれるタンパク質を分泌し、摂食を抑制したり、エネルギーの消費を積極的に行います。また脂肪酸を燃焼する役割のAMPキナーゼ(AMP-activated protein kinase)を活性化します。

しかし肥満が進行して大きい白色脂肪細胞になると、TNF-α( 腫瘍壊死因子)、遊離脂肪酸(細胞毒性のある脂肪酸)、レジスチンとよばれるインスリンの働きを阻害する蛋白質を分泌し、インスリン抵抗性になります(*6)。

このようなメカニズムで、肥満の人はインスリン抵抗性になります

 

遺伝

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遺伝子多型(ヒトの遺伝子は99.9%が人類共通で0.1%に違いがあります。0.1%の違う部分を多型と呼び、個人差になります)がもたらすインスリン抵抗性はいくつも報告があります(*6)。また双子の研究によるとPCOSにおける遺伝的な要素は79%という高確率であるという報告もあります(*7)。
β3-アドレナリン受容体(AR)遺伝子多型もその一つで、インスリン抵抗性、熱産生機構の異常、糖尿病の早期発症、糖尿病性腎炎などが報告されています(*8)。他にもPPARg多型,アディポネクチンイントロン多型があります。これは昔、日本人(アジア人)が農耕民族で肉をあまり食べていなかった為、エネルギーを蓄えるために上記の遺伝子多型が発生したと考えられています(*9)。

 

インスリン抵抗性の解決法

運動

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正常の人では通常、血液中のグルコースを運ぶ役割のあるGLUT4(Glucose transporter type 4)が細胞の中心付近にある小胞体に存在しますが、インスリンが分泌され、それを刺激として細胞がうけとめると、Glut4は細胞の膜へと移動し(トランスロケーション)、グルコースを積極的に細胞の中に取り込みます(*10*11)。細胞はグルコースからエネルギーを作ることで消費します。

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しかし肥満の人では脂肪細胞(*12)や骨格筋細胞(*13)でGLUT4のトランスロケーション作用が低下しています。またラットの研究において肥満群はインスリン受容体(インスリンを受け取り、そのシグナルを他の細胞や蛋白に伝える役割をもつ)の数やGLUT4の量が異なることも報告されています(*14*15)。
運動してすぐに現れる効果として、細胞のエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)が消費されてAMP(アデノシン一リン酸)が増えます。ATP<AMPになるとAMPキナーゼが活性化され、Glut4のトランスロケーションが亢進しグルコースが細胞でどんどん消費されます。

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また運動を続けることで現れる効果としてGlut4の量が増え、さらに安静時の脂肪酸燃焼レベルをあげるミトコンドリアが増えます。結果的に脂肪組織から放出される遊離脂肪酸が肝臓において中性脂肪として蓄積されることを抑えられ、肝臓のインスリン抵抗性改善に寄与します。

さらに最近の研究では、不要なタンパク質を分解する作用であるオートファジーがインスリンの分泌を増やすこと(*16)、さらにマウスの研究では運動によってオートファジーは誘導されることが明らかになり(*17)、運動の重要性が次々と指摘されています。

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日本で使用可能なインスリン抵抗性改善薬にはビグアナイド系(Biguanide)のメトフォルミンとチアゾリジン系(thiazolidine)のピオグリタゾンがあります。メトフォルミンが妊婦への投与に関して FDA (アメリカが設けた薬に対する胎児へのリスク分類:Aを最も安全とし、B、C、D、Xのカテゴリーがある)のカテゴリーがBであるのに対し、ピオグリタゾンはカテゴリーCであることから、国内外ともにPCOS患者には主にメトフォルミンが処方されます(*18)。メトフォルミンを服用するとAMPキナーゼが活性化され、運動しているのと同じ効果が得られ、さらに肝臓でグルコースが作られるのを抑える働きがあるので、血糖値を下げます。

ただし、PCOS治療の第一選択薬は排卵促進剤であるクロミフェンであり、2008年に生殖内分泌学会の治療指針で「クロミフェン抵抗性に対して,肥満,耐糖能異常,インスリン抵抗性のある場合にメトフォルミンを併用」と明記されています。メトフォルミンはPCOSの治療薬としては保険適用外であるため、使用には医師からの十分な説明を受けることが肝要です。

医薬品ではなくサプリメントでインスリン抵抗性が改善する成分があることも知られており、海外では産婦人科で使われています。アイスプラントという植物に含まれるピニトールという成分です。こちらについては、別ページで詳しく説明しています。

まとめ

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いかがでしたでしょうか。

少し難しい専門的なところまで説明しました。

多嚢胞性卵巣症候群の改善・治療のひとすじの光として、インスリン抵抗性にスポットをあてたメンテナンスによって、不妊が克服できる可能性があることがお分かりいただけたと思います。

食品にも含まれている安全な成分で、インスリン抵抗性を改善できるものに【ピニトール】という成分があります。こちらを配合している葉酸サプリは日本では葉酸サプリ「ベジママ」ママナチュレのみです。

不妊症ウェブマガジンPCOS(ぴーこす)では多嚢胞性卵巣症候群の方におすすめの葉酸サプリとして、ベジママとママナチュレを推奨しています。

 

ピニトールについてさらに詳しくはこちら。

【医師が監修】ピニトールとは?多嚢胞性卵巣症候群なら知っておきたい注目の妊活成分を勉強しよう

2016.09.29

 

 

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<<参考文献>>
1)水沼英樹,苛原 稔,久具宏司ほか: 生殖・内分泌委員会 本邦における多囊胞性卵巣症候群の新しい診断基準の設定に関する小委員会.本邦における多囊胞性卵巣症候群の新しい診断基準の設定に関する小委員会(平成17年度~平成18年度)検討結果報告.日産婦誌 2007;59:868-86
2)安西 英雄: インスリン抵抗性がもたらす多くの現代疾患とインスリン抵抗性改善成分 インスリン抵抗性改善成分グリスリン. New Food Industry 2006; 48: 1–14
3)竹内 亨,武谷雄二:10,内分泌疾患 卵巣機能不全,インスリン抵抗性(松澤佑次,藤田敏郎,門脇孝 編),p75-79,医学書院,東京,2008,
4)水沼英樹:多嚢胞性卵巣症候群の病態生理,日産婦誌58:1603-1608, 2006,
5)Ohnishi H, Saitoh S, Takagi S, Ohata J, Takeuchi H, Isobe T, Katoh N, Chiba Y, Fujiwara T, Akasaka H, Shimamoto K.: Incidence of insulin resistance in obese subjects in a rural Japanese population: the Tanno and Sobetsu study.: Diabetes Obes Metab. 2005 Jan;7(1):83-7.
6)野村 有紀: 遺伝子多型とは何か?(遺伝子多型の基礎を知る)、Anet. 周術期学術情報誌, 2016; 20: 1-6
7)Vink JM1, Sadrzadeh S, Lambalk CB, Boomsma DI. : Heritability of polycystic ovary syndrome in a Dutch twinfamilystudy. J Clin Endocrinol Metab. 2006 Jun;91(6):2100-4. Epub 2005 Oct 11. .
8)Walston J, Silver K, Bogardus C, Time of onset of non-insulin-dependent diabetes mellitus and genetic variation in the beta 3-adrenergic-receptor gene. N Engl J Med. 1995 Aug 10;333(6):343-7.
9)門脇 孝: 医とゲノム――第3回日本医学会特別シンポジウム 第2セッション ヒトゲノム解析の最前線(2)日本人の糖尿病の遺伝素因・分子病態の解明とオーダーメイド治療 日医雑誌2002 127(6): 41-56
10)Katz EB1, Stenbit AE, Hatton K, DePinho R, Charron MJ.: Cardiac and adipose tissue abnormalities but not in diabetes in mice dificient in GLUT4.: Nature. 1995 Sep 14;377(6545):151-5.
11)Ren JM, Marshall BA, Gulve EA, Gao J, Johnson DW, Holloszy JO, Mueckler M.: Evidence from transgenic mice that glucose transporter is rate-limiting for glycogen deposition and glycolysis in skeletal muscle.: J Biol Chem. 1993 Aug 5;268(22):16113-5.
12)Garvey WT, Maianu L, Huecksteadt TP, Birnbaum MJ, Molina JM, Ciaraldi TP. : Pretranslational suppression of a glucose transporter protein causes insulin resistance in adipocytes from patients with non-insulin dependent diabetes and obesity. J Clin Invest. 1991 Mar;87(3):1072-81.
13)Kelley DE, Mintun MA, Watkins SC, Simoneau JA, Jadali F, Fredrickson A, Beattie J, Thériault R.: The effect of non-insulin-dependent diabetes mellitus and obesity on glucose transport and phosphorylation in skeletal muscle. J Clin Invest. 1996 Jun 15;97(12):2705-13.
14)Goodyear LJ, Giorgino F, Sherman LA, Carey J, Smith RJ, Dohm GL.: Insulin receptor phosphorylation, insulin receptor substrate-1 phosphorylation, and phophatidylinositol 3-kinase activity are decreased in intact skeletal muscle strips from obese subjects. J Clin Invest. 1995 May;95(5):2195-204..
15)Goodyear LJ, Hirshman MF, Smith RJ, Horton ES. : Glucose transporter number, activity and isoform content in plasma membranes of red and white skeletal muscle. Am J Physiol. 1991 Nov;261(5 Pt 1):E556-61..
16)Ebato C, Uchida T, Arakawa M, Komatsu M, Ueno T, Komiya K, Azuma K, Hirose T, Tanaka K, Kominami E, Kawamori R, Fujitani Y, Watada H.Autophagy is important in islet homeostasis and compensatory increase of beta cell mass in response to high-fat diet.Cell Metab. 2008 Oct;8(4):325-32.
17)He C, Bassik MC, Moresi V, Sun K, Wei Y, Zou Z, An Z, Loh J, Fisher J, Sun Q, Korsmeyer S, Packer M, May HI, Hill JA, Virgin HW, Gilpin C, Xiao G, Bassel-Duby R, Scherer PE, Levine B.Exercise-induced BCL2-regulated autophagy is required for muscle glucose homeostasis.Nature. 2012 Jan 18;481(7382):511-5.
18)遠藤 俊明、馬場 剛, 齋藤 豪: クリニカルカンファランス. 生殖 生殖・内分泌領域の薬剤の使い方の工夫. PCOS に対するインスリン抵抗性改善薬の使い方. 日産婦誌2012; 64: 62-7

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