【医師が監修】多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病態と治療【完全ガイド】

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このページでは「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」とは?という点について、網羅的に説明をしています。

頻度・症状・原因・診断方法・検査・治療・不妊への影響などについてしっかりと理解したい方向けです。

専門的な部分もありますが、できる限り正確に記載してありますので、どうぞゆっくりとご覧ください。

 

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疫学と症状

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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)は生殖年齢にある女性の5~8%にみられ、多くの患者様に月経異常、不妊、第二次性徴の遅れなど生殖器に関する症状があらわれます。

月経異常とは、

・生理周期が90日以上である無月経
・生理周期が39日以上90日以内である稀発月経
・月経はあるけれど排卵されていない無排卵周期症

のことで、不妊の原因にもなります。

またホルモンバランスの異常により不正出血(生理以外の出血)がおこります。さらに男性ホルモンの過剰によりにきび、濃い体毛、低音声などの男性化徴候がみられます。また肥満による脂肪細胞の増加がPCOをひきおこす場合があるので、PCOS患者様には肥満がやや多い傾向があります。

ただ、これらの症状全てがあらわれることはなく、特に男性化徴候と肥満は日本人PCOS患者様の20%以下にとどまります。

完治が難しいため、患者様の年齢や治療目的に対処していく対処療法になります。また高齢になるほど高インスリン血症や2型糖尿病、心血管障害、脂肪肝などのリスクが高い為、早めに受診し、適切な治療をうけることが肝要です。

 

原因

まず正常な排卵のメカニズムを説明します。女性の卵巣は卵子の元である小さな卵胞を沢山蓄えています。そして生理のときに脳から卵胞刺激ホルモン(FSH)黄体形成ホルモン(LH)が分泌されいくつかの卵胞が育ちます。また発育中の卵胞を取り囲む「顆粒膜細胞」が卵胞ホルモン(E2)を産生分泌します。

E2値がピークになってから24~48時間後にLHが大量に分泌され、成長していた卵胞のうちの一つだけが急速に成熟します。約2cmまで成熟するとLHの影響を受けて卵巣から卵胞の殻を破って卵子だけが卵巣から飛び出し、排卵となります。
一方でPCOS患者様の卵巣内では、男性ホルモン(アンドロゲン)が多いため卵胞が充分な大きさまで育たず、約1cm以下の卵胞が排卵できず卵巣内に溜まっていきます。超音波検査の際は、数多くの卵胞が一列に並び真珠のネックレスのように見えるため、ネックレスサインと言われます。
またPCOSの患者様は、血糖値を下げる働きをするインスリンの血中濃度が高く、インスリンはLHの効果を高める作用があります。さらにLHは男性ホルモンを産生する作用があり、排卵されない卵胞が増えると、排卵を促すために更にLHが分泌され、結果として男性ホルモン値がますます上昇し、悪循環がすすみます。

したがってPCOSは年齢を重ねるごとに排卵障害が進行していきます

脂肪細胞は男性ホルモンをたくさん蓄えられるため、男性ホルモン値やインスリン値が高い原因として、肥満が関与している場合があります。また高カロリーな食事を多く摂る頻度が高いと、耐糖能(血糖を処理する能力)が下がり、血糖値が上がります。さらに血糖値を下げるためにインスリンが分泌されインスリン値が上がります。

補足
しかし肥満や糖分の過剰摂取がないにも関わらずPCOSになる患者様の多くは原因不明で遺伝性、家族性と言われています。

 

診断基準と検査

ホルモン値の検査は採血による血液検査で測定します。また卵巣や卵胞を調べるために超音波断層検査(エコー検査)を行います。エコー検査はお腹の上から機械をあてる経腹エコーと、膣の中に棒状の機械をいれる経膣エコーの2種類があります。

日本産科婦人科学会が定めた診断基準があり、注意点も考慮したうえで、下記3項目のうち全て該当する場合にPCOSと診断されます。

1. 月経異常:
2. 多嚢胞性卵巣
3. 血中男性ホルモン高値 またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常

補足
月経異常とは、無月経、稀発月経、無排卵周期症のいずれかとします。
注意
クッシング症候群、副腎酵素異常、体重減少性無月経の回復期など、本症候群と似た病気の患者様はPCOSと診断しません。

欧米ではロッテルダムと呼ばれる診断基準があり、1. 月経異常2. 多嚢胞性卵巣 3. 血中男性ホルモン高値(LH値は考慮しない)の3項目のうち2項目の該当でPCOSと診断されますが、人種の違いもあり、日本人には日本産科婦人科学会が定めた診断基準が用いられています。

2つめの基準の「多嚢胞性卵巣」は、エコー検査で両側の卵巣に多数の小卵胞がみられ、一方の卵巣のみで2~9mmの小卵胞が10個以上存在する場合をいいます。

 

血中ホルモン濃度検査

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血中ホルモンの検査は、排卵誘発薬や女性ホルモン薬を投与していない時期に、1cm以上の卵胞が存在しないことを確認の上で行います。また、月経または消退出血から10日目までは高LHの検出率が低いので、この時期を避けて検査を行います。

男性ホルモン高値は、テストステロン、遊離テストステロンまたはアンドロステンジオンのいずれかを用い、各測定系の正常範囲上限を超える場合に男性ホルモン高値と判断します。

LH高値の判定
スパックーS(ほとんどの病院、検査センターで用いられている性ホルモン値測定キット) による測定ではLH≧7mIU/ml(正常女性の平均値+1x標準偏差)かつLH≧FSHとして、BMIが25以上の患者様ではLH≧FSHのみでもLH高値とします。他の測定系による測定値は、スパックーSとの相違を考慮して判定されます。

 

治療

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肥満の患者様には第一に運動や糖質制限による減量を行います。肥満の原因がインスリン抵抗性(インスリンの効きにくい体になっている)の場合はメトフォルミンの服薬で効果があらわれます。また甲状腺機能低下症による基礎代謝低下が肥満の原因となっている患者様にはチラージンが処方されます。

その後は妊娠を希望するか否かで治療法が異なり、すぐに妊娠を希望していない場合は抗男性ホルモン薬であるスピロノラクトン、高LHを改善する効果のある低用量ピルを服用します。特に低用量ピルは望まない妊娠を避ける効果、月経痛や月経前症候群による痛みを和らげてくれる効果もあり、卵巣がんや子宮体癌の予防にもなります。また不足しているホルモンを薬によって補い、規則的な月経周期に戻すカウフマン療法は、ホルモンが足りないことによっておこる症状の改善や、思春期の患者様には第二次性徴を促す作用があります。

ただ、多くの患者様は不妊を訴えることで病院を受診し、PCOSと診断される方が多数です。妊娠を希望する場合、スピロノラクトンや低用量ピルは使えないので別の治療法になります。

多嚢胞性卵巣症候群の方の病態の原因はインスリン抵抗性であるという最新の知見が広まっており、肥満の方はダイエットを勧めます。しかし、肥満体形ではないのにインスリン抵抗性が高く、多嚢胞性卵巣症候群となっている方も日本人女性では多いです。

最近注目されているのは、アイスプラントという食品に含まれているピニトールという成分です。こちらを配合したサプリメントとしては、日本では葉酸サプリ「ベジママ」という商品があります。

 

不妊への影響

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PCOS患者様の約70%に排卵障害が見られますがその程度は様々ですので、PCOSであることを知らずに自然妊娠する人もいれば、妊娠までに時間を要する人もいます。しかし前述のように男性ホルモン値とLH値は悪循環に上昇し続けることから、排卵障害は年齢とともに深刻になり、月経周期も徐々に長くなるので、早めの治療開始が妊娠へとつながります。

排卵誘発剤であるクロミフェンを服用することで、すぐに排卵する人もいます。クロミフェンで反応が無い人にはプレドニンなどのステロイドや漢方薬の温経湯(ウンケイトウ)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)を併用します。

クロミフェンには副作用としてのぼせ、腹部緊満感、乳房の不快感、発疹、めまい、うつ、視力異常が報告されています。また半年以上の服薬で頸管粘液が減少したり、排卵期に子宮内膜が厚くならないなどの副作用が出てしまうので、その場合はFSH製剤(卵胞刺激ホルモン)を注射し、排卵を誘発します。

1~2日ごとに注射して排卵の発育を確認しながら続けていくので来院は大変ですが、FSH注射の1回の量を多くすると2個以上の卵子が同時に排卵される過排卵がおきたり、卵巣が3~4倍に腫れ、お腹に水がたまってふくれて血液が濃縮する卵巣過剰刺激症候群(OHSS:ovarian hyper stimulation syndrome)のリスクがあります。

FSH製剤は少ない量を毎日投与することが重要なので近年ではペン型注射器による自宅での自己注射が可能になり、過排卵やOHSSの確率が減少し、妊娠率も上がってきています。また腹腔鏡下卵巣多孔術とよばれる卵巣に穴をあける手術も薬に対する反応性が良くなり、また自然と排卵できるようにもなり有効な治療法の一つです。半年~一年間で元にもどり効果が切れてしまう、効果の予測が難しいなどのデメリットはありますが、1年以内に50%以上の人が妊娠しています。

他の方法として体外受精もあり、過排卵やOHSSになりにくいことがメリットです。またPCOS患者様は卵子の質は少し下がりますが、卵巣に沢山卵子が残されているので、良い卵子を選んで移植することが可能です。

 

 

まとめ

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いかがでしたでしょうか。多嚢胞性卵巣症候群の背景にある原因と、それへの対策について少しでも参考になればうれしいです。最近の研究では、多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性の関係が指摘されており、そこが不妊治療のキーになると言われています。

次の記事では多嚢胞性卵巣症候群とインスリンの関係を詳しく説明しています。

【医師が監修】多嚢胞性卵巣症候群とインスリン抵抗性の関連まとめ

2016.09.21

 

参考URL
http://www.marianna-u.ac.jp/hospital/reproduction/feature/case/case03.html
http://mimuro-cl.com/pco.html
http://ami-clinic.jp/gynecology/for_user_pcos.html
http://aska-cl.com/checkup/checkup-blood.html
http://www.haruki-cl.com/pcos/
http://www.doctors-gym.com/internalmedicine/pcos
http://www.shouman.jp/details/5_42_90.html
http://www.kamiyaclinic.com/qa/index06.html
http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6009-185.pdf
http://www.jsog.or.jp/PDF/60/6011-477.pdf
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2014.pdf
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000094.html

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